会長 川田一光

 4年目に入るコロナ感染症の下で、当業界としては、公共インフラとしての卸売市場の役割を踏まえ、できる限りの感染防止対策を講じながら営業を続けてまいりました。新年を迎えて、引き続き、気を緩めることなく業務に取り組んでいきたいと思っております。
 さて、当協会会員の経営動向を見ますと、極めて薄い利益構造(令和3年度78会員の総売上高21,509億円、営業利益63億円、営業利益率0.3%)が続く中で、昨年末には伝統ある会員会社が解散に追い込まれるなど、業界としては、大変厳しい状況が続いております。
 こうした厳しい経営状況が続く中で、今般の農業生産資材価格の高騰により、産地からは従来以上に強い価格要請を受けております。当業界としては、可能な限りご要請に応じた価格形成に務めておりますが、私共の業務コストも高騰し、更に経営状況が厳しくなっている状況下では、それ以上の対応が困難となっている実情を産地の皆様にはご理解いただきたいと思っております。
 いずれにしましても、相場だけに左右されるというビジネスでは、これからなかなか難しいことは言うまでもありません。大きな時代の流れを見据え、政府が最重要施策として推進される輸出や後述する物流問題への対応も含め、新しいビジネスと市場機能の強化に向け、戦略的に取り組んでいきたいと思っております。
 また、今般の基本法の見直し作業の中でも、少子高齢化による国内市場の縮小が強調されておりますが、青果物需給・流通の現状を見ますと、需要の縮小以上に生産の脆弱化を懸念しております。こうした産地を販売面から支えられるのは、国産青果物の約8割を取扱う卸売市場以外にないと確信しています。集荷・分荷、価格形成、代金決済、情報受発信という卸売市場固有の機能をしっかり発揮することにより、産地を支援してまいる所存です。
 以上の他にも業界あげて対応すべき課題が山積しております。まず、物流の問題です。いわゆる2024年問題はあと1年余りに迫っております。政府の検討会のパレット導入等に係る具体策の検討も本格化しており、当協会としても、一昨年10月に設置した物流部会を頻繁に開催して、現場の実態を踏まえた意見を集約し、政府の検討に反映されるよう努めております。本課題は、青果物が産地から卸売市場を経由して消費者へ円滑に流れていくために対応が不可避の課題であり、青果物流通の各段階の関係者が協力・連携しつつ取り組んでいくことが肝要と考えております。
 また、基本法の見直しの作業、特に大きな論点になるとお伺いしている「適切な価格形成」への対応、10月からスタートするインボイス制度、事故処理の問題など課題を数えると枚挙に暇がない状況でありますが、我々青果卸売業者は、市場のメインプレイヤーとして、戦略的かつ主体的に取り組み、卸売市場の維持発展に尽力して参る所存ですので、関係の皆様のご指導・ご鞭撻を賜りますよう切にお願い申し上げます。 

令和5年年頭所感より抜粋